不眠症
Cases

不眠症とは?
不眠症とは、継続的に十分な睡眠がとれない疾患です。
症状はさまざまで、寝つきが悪かったり、途中で何度も目が覚めたり、朝早くに目覚めて再び眠れなくなるなどがあります。
そのほか、不眠症による影響で、日中に強いだるけや集中力の低下をきたし、意欲の減退、さらには食欲不振や頭重感など、心身の不調が現れることがあります。
不眠症は一時的なものもあり、通常は原因が解消されれば自然に回復することが多いですが、慢性化する場合もみられます。
不眠症の原因はストレスや精神的な問題、身体疾患、薬の副作用など多岐にわたります。放置すると「眠れないことへの不安」がさらに不眠を悪化させる悪循環に陥ることもあるため適切な対策が必要です。

不眠症のほかにもある
睡眠関連疾患
不眠症のほかにも、睡眠関連疾患はいくつかあります。代表的な疾患は次の3つです。
- レム睡眠行動障害(RBD)
- 睡眠相後退症候群
- レストレス・レッグス症候群
レム睡眠行動障害(RBD)
レム睡眠行動障害(RBD)は睡眠時の異常行動がみられる疾患です。
寝ている時に突然大きな叫び声をあげたり身体を動かしたりするなどの症状があります。本人は寝ているときの出来事を覚えておらず、同居しているご家族からの相談が受診のきっかけになることが多いです。
また、50代以降の中高年男性に多くみられ、加齢に伴い増えていくことが特徴です。
レム睡眠行動障害の治療法には睡眠を深くする薬剤を使用する方法などがあります。
睡眠相後退症候群
睡眠相後退症候群とは、体内時計がずれてしまい睡眠に問題が生じる疾患です。
通常、私たちには体内時計として、夜に眠くなり朝に目覚める睡眠覚醒リズムが備わっています。
睡眠相後退症候群は、その睡眠覚醒リズムが普通の人よりも遅れていることが原因で、「夜に眠くならない」「朝起きられない」という症状がみられます。睡眠相後退症候群の治療には、生活習慣の指導や薬物療法を用いることが多いです。
レストレス・レッグス症候群
レストレス・レッグス症候群は、足に不快感を覚える疾患です。
別名「むずむず脚症候群」ともよばれ、眠ろうとした時やじっと座っている時に、脚の内側にむずむずした不快感を覚え、脚を動かすと落ち着くという特徴があります。
レストレス・レッグス症候群の治療には、生活習慣の改善や薬物療法などを用います。
不眠症の特徴
不眠症には主に以下4つの特徴があります。
- ストレスによって不眠症状が
出やすい - ストレスが続くと慢性化する
ことがある - 加齢に伴って睡眠に関する悩みは
増える - 高齢者は寝床の上で過ごす
時間に注意
特徴①ストレスによって
不眠症状が出やすい
ストレスは不眠症の大きな要因の一つであり、強いストレスを感じると、一時的に眠れなくなることがよくあります。
通常、不眠の症状は数日から数週間で改善することが一般的です。しかし、ストレスが解消されないまま続くと、長期間にわたり眠れない状態に陥ることがあります。
特に、ストレスをうまく解消できない人や運動不足の人、仕事に就いておらず今後に不安のある人は、不眠を発症しやすいとされています。
また、「今夜は眠らなければ」と意識しすぎることで、かえって緊張や不安が増し、さらに眠れなくなる悪循環に陥ることもあるため注意が必要です。ストレス管理や生活習慣の見直しが重要ですが、改善しない場合は専門医に相談することが重要です。
特徴②ストレスが続くと
慢性化することがある
ストレスが長期間続くと、不眠症が慢性化するリスクが高まります。ストレスフルなことが続かないよう、日常生活で気をつけることが不眠症の慢性化の防止につながります。
そのほか、寝る前のカフェインやニコチンの摂取、寝酒の習慣も睡眠の質を低下させる要因です。
また、不眠を補おうと長時間布団で過ごすことは、寝つきを悪くし、眠りを浅くする可能性があります。日中の活動量が減ることも、夜の睡眠を妨げる一因となります。
不眠の慢性化を防ぐには、不適切な習慣を見直し、ストレスを適切に管理することが重要です。
特徴③加齢に伴って
睡眠に関する悩みは増える
年齢を重ねると、睡眠のリズムが変化し、不眠の悩みを抱える人が増えます。
特に、高齢者の多くが「夜中に何度も目が覚める」「朝早く目が覚めてしまう」といった中途覚醒や早朝覚醒を経験します。
これは、加齢に伴い体内時計が変化し、睡眠に関わる体温やホルモン分泌などの生体機能リズムが早い時間にずれ込むためです。
その影響で昼間に眠気を感じることも多くなり、昼夜の睡眠バランスが崩れることもあります。
加齢に伴う睡眠の悩みは自然な現象ですが、うつ病や泌尿器の病気が関係している場合もあるため、不安があれば医師に相談することが大切です。
特徴④高齢者は寝床の上で
過ごす時間に注意
高齢者は長時間寝床で過ごすと不眠を引き起こしやすくなるため注意が必要です。
眠くないのに布団に入ると、寝つきが悪くなり、夜中に目覚める回数も増えることがあります。
無理に長く眠ろうとせず、自分に合った睡眠時間を確保することが大切です。日中の活動を適度に増やし、自然な眠気を促すことで睡眠の質を維持しやすくなります。
不眠症の症状は4タイプ
不眠症は、症状別に次の4タイプに分けられます。
- 入眠障害
- 中途覚醒
- 早朝覚醒
- 熟眠障害
それぞれのタイプは、不眠症の原因を探ったり睡眠薬を選択したりするときの参考になります。これらの症状は同時に現れることも
あります。
①入眠障害
入眠障害とは、布団に入っても30分以上眠れず、寝つきが悪い状態が続く不眠症の一種です。
不眠症の中でも特に多いタイプとされ、スマホの使用やカフェイン摂取を控えても、なかなか眠れない場合は入眠障害の可能性があります。
②中途覚醒
中途覚醒とは、一度眠りについても夜中に何度も目が覚めてしまうタイプです。
特に高齢者に多く見られ、加齢による睡眠の浅さや、泌尿器の疾患による夜間頻尿が原因となることもあります。
また、寝室の環境、暑さや寒さによる寝苦しさが影響する場合もあります。
一度目覚めると再び眠るのが難しくなることが多く、結果として十分な睡眠時間を確保できなくなることも多いです。
③早朝覚醒
早朝覚醒とは、予定している起床時間よりも2時間以上早く目が覚め、その後再び眠れなくなるタイプです。
特に高齢者に多く見られますが、高齢者以外にもうつ病の症状として現れることがあります。
夜の睡眠時間が短くなりがちで、結果として睡眠不足を招くことがあります。
④熟眠障害
熟眠障害とは、十分な睡眠時間を確保しているにもかかわらず、眠りが浅く、しっかり休んだ感じが得られないタイプの不眠症です。
朝起きても疲労感が残り、日中の活力低下や集中力の低下を引き起こすことがあります。
熟眠障害は睡眠の質が低下していることが原因で、ストレスや生活習慣の乱れが関係する場合もあります。
単に早く寝るだけでは改善しにくいため、医療機関に相談することが大切です。

不眠症の主な原因
不眠症の原因はさまざまですが、大きく次の4つの要因に分けられます。
- 心理的要因
- 身体的要因
- 環境要因
- 生活習慣要因
①心理的要因
不眠症は、心理的要因が原因のひとつです。心理的要因とは不安やストレス、精神的な緊張などが挙げられます。
悩みごとやイライラが続くと、リラックスできず、寝つきも悪くなって不眠が慢性化することもあります。
また、神経質な性格で睡眠へのこだわりが強すぎる人は、ストレスをより強く感じて不眠症になりやすいです。
②身体的要因
身体的要因によって不眠症が引き起こされることもあります。
身体的要因とは、体の不調や病気のことで、それらが原因で睡眠が妨げられる状態を指します。
例えば、慢性的な痛みやかゆみ、息苦しさ、咳が続くと、寝つきが悪くなったり、途中で目覚めたりしやすいです。
また、頻尿によって夜間に何度も起きることも、不眠の身体的要因のひとつです。
そのほか、高血圧や心臓病、呼吸器疾患、糖尿病などの病気が関係している場合もあり、その場合は基礎疾患の治療を優先することが重要です。
③環境要因
寝室の環境が睡眠に適していないなど、環境要因も不眠症の原因のひとつです。
例えば、騒音や明るすぎる寝室、室温の高さ・寒さが影響し、眠りを妨げることがあります。
また、旅行や引っ越しで枕や布団が変わると、違和感から寝つきが悪くなることもあります。環境要因による不眠症を改善・防止するためには、静かで暗く、温度・湿度を保てる場所など、自分が心地よく寝られる環境を整えることが大切です。
④生活習慣要因
不眠症は生活習慣要因によっても引き起こされます。不眠症の生活習慣要因とは、睡眠に悪影響を及ぼす、日常の行動や摂取する物のことです。
例えば、カフェインやニコチンには覚醒作用があり、寝る前に摂取すると眠りにくくなります。アルコールは一時的に眠気を誘うものの、夜中に目が覚めやすくなる原因になります。
さらに、運動不足や交替制勤務による生活リズムの乱れも、生活習慣要因のひとつです。
不眠症の改善方法や
治療法
不眠症の改善方法・治療法は主に次の2つです。
- 睡眠習慣の改善
- 薬物療法
①睡眠習慣の改善
不眠症の改善には、まずは自分で睡眠習慣を改善することが重要です。具体的な改善方法として以下が挙げられます。
- 毎日の就寝時間や起床時間を統一する
- 起床後は太陽光を浴びる
- 適度な運動を取り入れる
- 睡眠時間にこだわりすぎない
- 寝る前の飲酒を控える
- 日々の生活でストレス解消する
など
毎日の就寝時間や起床時間を統一することで、睡眠習慣の改善につながります。
体内時計は規則正しいリズムで動いているため、例えば週末の夜更かしや昼寝のしすぎは避け、毎日同じ時間に寝て起きる習慣をつけることが重要です。
起床時は朝の光を浴びることも睡眠の質を向上させるポイントで、朝に太陽の光を浴びると体内時計がリセットされ、夜の自然な眠気につながります。適度な運動を取り入れることも効果的で、日中に軽い有酸素運動を行うと、夜の眠気が自然と訪れやすくなります。ただし、激しい運動は寝つきを悪くする可能性があるため、負担の少ない運動を継続することが大切です。
また、睡眠時間にこだわりすぎないことも重要です。「〇〇時間寝なければ」と意識しすぎると、かえって眠れなくなることがあります。
そのほか、日々の生活で読書や音楽、軽い運動など自分に合った方法で気分転換を行い、ストレスを解消する習慣を持つことも、不眠改善には欠かせません。
②薬物療法
不眠症が続く場合は、薬物療法を用いるのも選択肢のひとつです。
不眠治療には睡眠薬を用いた薬物療法が一般的で、睡眠薬を正しく服用すれば、依存や副作用のリスクを抑えながら不眠の改善が期待できます。
ただし、自己判断で使用量を増やしたり、長期間漫然と服用したりするのは避け、医師の指導のもと適切に使用することが大切です。
「睡眠薬は一度飲み始めると、睡眠薬が眠れなくなる」といった不安を持つ人もいますが、現在の睡眠薬は依存性が低く、安全性が高いものも増えています。
特に短期間の使用であれば、過度に心配する必要はありません。長期間の服用を希望する場合は、医師と相談しながら調整する必要があります。
不眠症のセルフ診断
チェックリスト
以下の項目に当てはまるものが多い場合、不眠症の可能性があります。
- 布団に入っても30分以上寝つけないことが多い
- 夜中に何度も目が覚めることがある
- 一度目覚めると、なかなか再び眠れない
- 予定よりも2時間以上早く目覚めてしまう
- 朝起きても熟睡感がなく、疲れが取れていない
- 日中に強い眠気を感じることが多い
- 眠気のせいで集中力が続かない
- 眠気で仕事や勉強のパフォーマンスが落ちている
- 寝る時間や起きる時間が一定でない
- 休みの日は外出せず、家で過ごすことが多い
- カフェインやタバコを習慣的に摂取している
- 寝る前にお酒を飲むことが多い
- 嫌なことがあると長時間考え込んでしまう
- 大事な予定の前日は緊張して眠れなくなる
- ストレスや悩みを人に相談せず、
一人で抱え込みやすい - 家庭内のトラブルや人間関係のストレスを感じている
- 小さな音でもすぐに目が覚めて
しまう - 悪夢を頻繁に見る
不眠症が疑われる場合、まずは生活習慣の見直しを行い、それでも改善しない場合は専門医に相談することをおすすめします。不眠症の治療は、内科、精神科、心療内科、睡眠専門外来などを受診しましょう。