統合失調症

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統合失調症とは?

統合失調症とは、思考や感情のまとまりが難しくなり、生活にさまざまな影響を及ぼす精神疾患です。
症状はさまざまですが、実際には存在しない声が聞こえる幻聴などの症状が現れる「陽性症状」、感情表現が乏しくなったり閉じこもりがちになったりする「陰性症状」があります。周囲から見ると、独り言をつぶやいたり、他人の悪口を言われていると訴えたりするなどがサインとして現れます。
統合失調症は珍しい病気ではありません。思春期から40歳頃にかけて発症しやすいとされ、適切な治療によって症状の軽快が可能です。
早期に治療を開始することで、症状の悪化をより早期に抑えることができます。そのため、症状に気づいた際には、早めに専門機関へ相談することが重要です。

統合失調症とは?のイメージ

統合失調症と
うつ病の違い

統合失調症とうつ病はどちらも発症のメカニズムが完全には解明されていない精神疾患になりますが、症状や経過、予後に違いがあります。
うつ病は、脳内の伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の不足が原因とされ、気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠や食欲の乱れなどの症状が特徴的です。
一方、統合失調症は脳内の伝達物質である「ドーパミン」の過剰分泌が原因とされ、幻覚や妄想といった陽性症状が目立ち、人間関係にも大きな影響を与えます。症状の区別が難しいため、自己判断せず、少しでもおかしいと感じたら早期に専門医の診断を受けることが重要です。

統合失調症の症状

統合失調症の症状はさまざまですが、大きく分けて次の3種類があります。

  • 陽性症状
  • 陰性症状
  • 認知障害

症状①陽性症状

統合失調症の陽性症状には、幻覚や妄想、思考の混乱などが含まれます。周りの人から見た具体的なサイン・症状には次のものが挙げられます。

  • 常に不安で緊張している
  • 悪口を言われた、いじめを受けたと言うが、実際は何も起きていない
  • 監視されている、盗聴されていると言うが、何も見つからない
  • 思い込みが激しい
  • 独り言をつぶやく
  • 批判や命令の声が聞こえる
    と言う

幻覚の症状としては、存在しない声が聞こえる幻聴が特に多く、誰もいないのに批判や命令の声が聴こえるなど、それを現実に起こったものとしてとらえることにあります。
また、妄想の症状は、現実には起こっていないことを強く確信している状態です。「誰かに監視されている」「テレビが自分のことを話している」などの症状があり、周囲が否定しても受け入れません。
さらに、歌詞や本、新聞の一節が自分に向けられていると感じる「関係妄想」という症状もあります。
思考障害を持つ場合、話がまとまらず脈絡のない発言が増えることがあります。

症状②陰性症状

統合失調症の陰性症状は、感情変化がなくなって意欲が減退し、社会性が低下して日常生活に影響を及ぼすものです。
具体的なサイン・症状には次のものが挙げられます。

  • 表情の変化が少なくなり顔が変わったように見える
  • 喜怒哀楽の表現が乏しくなる
  • 他者の感情表現に共感することが少なくなる
  • 会話上の抽象的な言い回しが理解できない
  • 自発的に何かをしようとする意欲がなくなる
  • 他者とのコミュニケーションをとらなくなる
  • 趣味や楽しみに興味を示さなくなる
  • 何もせずに閉じこもっている

感情表現が乏しくなると、表情の変化が少なくなり、目を合わせたり、身振りで感情を示したりすることが減ります。嬉しいことや悲しいことがあっても、ほとんど反応を示さなくなることもあります。
また、発話が極端に減ることもあり、会話が短くなり内容が単調になるのも特徴的です。さらに、以前は楽しめたことに対して興味を失い、喜びを感じにくくなると陰性症状が疑われます。これらの症状が進行すると、意欲の低下や目標の喪失につながるため、早期の対応が重要です。

症状③認知障害

統合失調症に伴う認知障害は、思考や判断、記憶などの機能が低下する症状です。集中力が持続しにくく、本や映画の内容を理解するのが難しくなったり、指示通りに作業を進められなくなったりします。
具体的なサイン・症状には以下が挙げられます。

  • 物事を覚えるのに時間がかかるようになる
  • 目の前の仕事や勉強に集中するのが難しくなる
  • 考えがまとまらなくなる
  • 物事に優先順位をつけられなくなる
  • 計画を立てるのが難しくなる
  • 記憶力が低下し、社会生活の問題解決能力が低下する
  • 作業のミスが増える

一つのことに注意を向け続けるのが困難になり、仕事や学習に支障をきたしやすくなるのも認知障害の症状のひとつです。

こうした障害は日常生活や対人関係にも影響を与えるため、適切なサポートが必要です。

統合失調症の経過

統合失調症の経過は、次の段階を経て進行し、それぞれの時期に異なる症状が現れます。

  1. 前兆期
  2. 急性期
  3. 回復期
  4. 安定期・慢性期

前兆期では明確な精神症状は見られませんが、不眠やイライラ、集中力の低下などの変化が現れます。周囲も気づきにくく、漠然とした違和感が続くことが多いです。急性期に入ると陽性症状や陰性症状が現れはじめ、本人の行動にも変化が現れます。周囲の言葉を誤解したり、極端な緊張や興奮が見られることもあり、この時期に治療を開始することが特に重要です。
回復期では、陽性症状が落ち着く一方で、意欲の減退など陰性症状が残ることが多いです。回復期は心身のエネルギーを回復させるための休養が必要となります。また、安定期・慢性期になると、治療を続けることで落ち着いた生活を取り戻せるようになりますが、陰性症状が持続することもあります。
再発を防ぐために、服薬や生活のリズムを整えることが重要です。

統合失調症の原因

統合失調症の原因は明らかになっていません。しかし、遺伝的要因や脳の機能の変化、環境的な要因が複雑に関与していると考えられています。
遺伝的な素因として、親や兄弟が統合失調症である場合、発症リスクが高まることが研究で示されています。ただし、遺伝だけで発症するわけではありません。脳内の機能の変化も発症に関係していると考えられており、脳内で情報を伝達する神経伝達物質のバランスの乱れが統合失調症に関与すると指摘されています。また、環境要因も大きな影響を及ぼし、例えば妊娠中の母体のインフルエンザ感染や分娩時の酸素欠乏、出生時の低体重などが脳の発達に影響を与える可能性があります。
そのほか、ストレスや社会的なプレッシャーなどが、発症の引き金になるとも言われており、ストレス脆弱性モデルという仮説が提唱されています。このストレス脆弱性モデルというのはもともとストレスに弱い素因を持っており、それに色々なストレスがかかることで発症するという仮説です。
これらの要因が重なり合うことで、統合失調症が発症すると考えられています。

統合失調症に
なりやすい人の特徴は?

次の特徴にいくつか当てはまる人は、統合失調症になりやすいとされます。

  • ストレスに弱い人、ストレスが過度にかかっている人
  • 周産期にイベントがあった人
  • 特定の性格
    (おとなしい、素直、内気、控えめ、傷つきやすいなどの気質)
  • 家族歴など遺伝的傾向がある人

出生前の母親の感染症や栄養不良、胎児の低酸素状態など、周産期にイベントがあった人も統合失調症の発症の原因になると報告されています。
ストレスへの耐性は人それぞれ異なります。同じストレスを受けても、ストレスに敏感で対処が苦手な人は心の負担が大きくなりやすいです。同じストレスを経験しても、適切なストレス対処法を身につけている人は心のバランスを崩しにくく、統合失調症の発症リスクも低くなります。そのため、ストレスの管理方法を学び、適切に対処することが統合失調症を予防する方法のひとつです。
ただし、上記のような特徴を持つ人でも、全員が統合失調症を発症するわけではありません。

統合失調症になりやすい人の特徴のイメージ

統合失調症の診断

統合失調症の診断は特定の検査だけで確定できるものではなく、患者さんの症状や生活の変化、家族歴などを総合的に評価して行われます。診断の際には、まず医師が患者の話を詳しく聞き、妄想や幻覚、支離滅裂な思考や言動などの特徴的な症状が6ヶ月以上続いているかを確認します。
さらに、これらの症状が仕事や学業、人間関係に著しい影響を与えているかどうかも重要な判断基準です。
診断の際には本人だけではなく、家族や友人、教師などの証言も、発症時期や症状の進行を把握する上で参考にされます。また、統合失調症と似た症状を引き起こす病気を除外するために、血液検査やCT・MRIなどの画像検査が行われることがあります。例えば、脳腫瘍や甲状腺疾患、自己免疫疾患、薬物の副作用などが原因で精神症状が出ることがあるため、これらの可能性がないか慎重に鑑別することが重要です。

統合失調症の治療法

統合失調症の治療法には次の2つがあります。

  • 薬物療法
  • 心理社会的治療

治療法①薬物療法

統合失調症の治療は、薬物療法を中心に行われます。
主に使用される治療薬は「抗精神薬」です。抗精神薬は、脳内で過剰に働くドーパミン神経の活動を抑え、症状を改善する効果が期待できます。また、抗精神薬には、従来型の「定型抗精神病薬」と、新しい「非定型抗精神病薬」があります。定型抗精神病薬は陽性症状に効果を示し、非定型抗精神病薬は陰性症状や認知機能の低下にも作用することが特徴です。そのほか、補助的な薬として次の治療薬を使用することもあります。

  • 抗不安薬
  • 抗うつ薬
  • 睡眠薬

統合失調症の治療には、薬物療法に加えて十分な休養をとることも大切です。

治療法②心理社会的治療

統合失調症の治療には、心理社会的治療が用いられることもあります。
心理社会的治療は、病気の理解を深め、社会生活を円滑に送るためのスキルを身につけることを目的とした治療法です。
例えば、患者さんの病状等にあわせて、次のような方法が用いられます。

  • 心理教育
  • 生活技能訓練(SST)
  • 認知矯正療法
  • 作業療法
  • 就労支援

心理教育では、患者さんと家族が病気や治療について学び、適切な対処法を習得します。
生活技能訓練(SST)は、ロールプレイを用いて対人関係や社会生活のスキルを高める方法です。また、認知矯正療法では認知機能を向上させる言語セッションを行って、社会復帰を支援します。
これらの取り組みは、患者さんの自立と生活の質の向上につながります。

統合失調症は完治する?
再発しやすい点に注意

統合失調症は医学的に完治が難しい病気です。しかし、適切な治療を続けることで症状をコントロールし、社会生活を送ることは可能です。
ただし、再発しやすい特徴があるため、長期的な治療が必要となります。
再発を繰り返すと、精神機能や社会的な能力が低下し、日常生活に支障をきたすことがあります。さらに、薬が効きにくくなり、回復までに時間がかかるようになるほか、入院が必要になるケースも少なくありません。
そのため、統合失調症の治療は長期的に継続し、症状の安定を維持することが大切です。

統合失調症にしては
いけないことはある?
ご家族の対応

統合失調症の家族を支える際には、批判、敵意、過干渉を避けることが重要です。
具体的には、次のような対応を避ける必要があります。

  • 無理に活動させようとしたり、働かせようとする
  • 本人の要望を全て聞き入れてしまう
  • 閉じこもりがちな生活に批判的な言葉を投げかける

など

このように、批判的な言葉や、過保護・過干渉的な対応は、統合失調症の症状が悪化するリスクを高めるため注意が必要です。家族としては、冷静に接し、適度な距離感を保ちながらサポートすることが求められます。
統合失調症に対する偏見をなくし、病気を正しく理解することが家族に求められる最初のステップです。