発達障害

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発達障害とは?

発達障害とは、脳の働き方の違いにより、行動の仕方や物事の捉え方が一般的なパターンと異なり、日常生活に困難が生じる状態を指します。
「ADHD(注意欠如・多動症)」や「ASD(自閉スペクトラム症)」などの種類があり、同じ診断名でも特性の表れ方は個人によって異なります。また、複数の障害が併存することも珍しくありません。
発達障害の特性が十分に理解されていないと、周囲から誤解されることもありますが、環境の調整や適切な支援によって、発達障害の方が生活しやすくすることが可能です。
また、発達障害はしつけや教育の問題ではなく、脳の働き方の違いによるものであり、多様な特性があることを理解することが重要です。

発達障害とは?のイメージ

発達障害の
主な種類と特徴

発達障害の主な種類には以下があります。ここからは、それぞれの特徴について解説します。

  • ADHD(注意欠如、多動症)
  • ASD(自閉スペクトラム症)
  • SLD(限局性学習症)、LD(学習障害)
  • トゥレット症候群・チック症
  • 吃音

ADHD(注意欠如、多動症)

ADHD(注意欠如・多動症)は、「注意欠如多動症」という診断名の発達障害のひとつです。
次の3つの特性をもちます。

  • 注意の持続が難しい「不注意」
  • 落ち着きがない「多動性」
  • 衝動を抑えにくい「衝動性」

ADHDの症状は12歳以前に現れるとされており、これらの特性が日常生活に影響を及ぼし、学校や職場での適応が難しくなる人が多いです。
不注意の具体的な特徴としては、物事に集中し続けることが難しく、課題のミスが多い、指示を聞き逃しやすいなどが挙げられます。多動性や衝動性の特徴としては、じっとしていることが困難、思ったことをすぐに口に出してしまうといった行動が見られます。幼少期にはこれらの特徴が目立つことが多いですが、成長とともに多動性は落ち着くことがある一方、不注意の特性は大人になっても続くことも少なくありません。
例えば、成人期には計画的に物事を進められない、感情のコントロールが難しい、集中すべきときに別のことを考えてしまうなどが、ADHDの症状のひとつです。

ASD(自閉スペクトラム症)

ASD(自閉スペクトラム症)は、対人関係の築き方や社会的なコミュニケーションが難しいことを特徴とする発達障害のひとつです。
具体的には、相手の気持ちを察することが難しい、表情や身振りから感情を読み取るのが苦手、会話のやり取りが一方的になりやすいなどの傾向が見られます。
そのほか、特定のルールや習慣に強くこだわる、特定の物事への興味が極端に強いなどもASDの人の特徴です。ASDの特性は幼少期から現れることが多く、周囲との関わりが難しいため、早い段階で気づかれることが少なくありません。ただし、症状の現れ方には個人差があり、幼児期には目立たなくても、成長して社会生活が複雑になる中で困難を感じ、大人になってから診断を受けるケースもあります。
また、以前は「自閉症」「PDD(広汎性発達障害)」「アスペルガー症候群」などと分類されていましたが、診断基準の変更により、現在は総称して「自閉スペクトラム症」とよばれます。

SLD(限局性学習症)、
LD(学習障害)

SLD(限局性学習症)は、特定の学習分野に困難を抱える発達障害のひとつです。以前までの診断名は「LD(学習障害)」となっていました。
知的発達に遅れはなく、視覚や聴覚の障害、経済的・環境的な要因とも関係がないにもかかわらず、読み書きや計算などの習得が難しいことがSLDの人の特徴です。
主に「読むこと」「書くこと」「計算や数の概念」の分野で困難が見られ、これらの能力の一部または複数に影響を及ぼします。
学習の問題が明確になるのは学校教育が始まる頃が多いため、就学期以降に診断されるケースが一般的です。
しかし、就学前に言葉の発達の遅れや、指先の細かい動きが苦手で文字を書くことに困難がある場合、早い段階で気づかれることもあります。
SLDのある子どもは、特定の学習領域でつまずくものの、適切な支援や学習方法の工夫により能力を発揮することが可能です。そのため、本人の特性に応じた学習環境の調整が重要となります。

トゥレット症候群・チック症

トゥレット症候群およびチック症は、意図せずに繰り返される素早い動きや発声を特徴とする神経発達症の一種です。トゥレット症候群はチック症の重症型です。
チック症は、一時的または慢性的に瞬きや肩をすくめるといった「運動チック」、咳払いや特定の言葉を発する「音声チック」があります。
これらが1年以上続き、複数の運動チックとひとつ以上の音声チックが同時に見られる場合、トゥレット症候群と診断されます。

吃音

吃音(きつおん)は、言葉をスムーズに話すことが難しくなる障害で、「どもる」と表現されることもあります。
例えば、同じ音を繰り返す、音を引き伸ばす、言葉が出ずに間が空いてしまうといった症状が特徴です。幼児期に発症することが多く、多くの場合は成長とともに軽減または消失しますが、症状が持続し、青年期や成人期に影響を及ぼすこともあります。
吃音が続く場合、会話への不安や対人関係のストレスが生じやすく、電話応対や自己紹介など特定の状況で話すことが難しくなることもあります。

発達障害のサイン・症状

ここからは、発達障害の以下5種類のサイン・症状について解説します。

  • ADHDのサイン・症状
  • ASDのサイン・症状
  • SLD、LDのサイン・症状
  • トゥレット症候群のサイン・症状
  • 吃音のサイン・症状

ADHDのサイン・症状

ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」「多動性」「衝動性」を主な特徴とする発達障害です。
具体的には、次のような行動がADHDのサイン・症状として挙げられます。

  • じっとしているのが難しく、
    手足を動かし続ける
  • 授業中に立ち歩く
  • 話し続けてしまう
  • 順番を待つのが苦手
  • 他人の会話に割り込む
  • 課題や遊びに集中できず、
    ミスが多い
  • 話しかけられても注意が
    向かない
  • 忘れ物が多い
  • 計画を立てて物事を進めるのが苦手
  • 集中力が続かない

また、大人になると、多動性は落ち着くことが多いものの、集中力が続かない、感情のコントロールが難しいといった課題が現れます。

ASDのサイン・症状

ASD(自閉スペクトラム症)は、他者とのコミュニケーションが苦手であることが特徴です。
具体的には、次のような行動がASDのサイン・症状として挙げられます。

  • 人と目を合わせない
  • 指さしをしない
  • 会話が一方的になりやすい
  • 同じ行動を繰り返す
  • 特定のことに強いこだわりを
    持つ
  • オウム返しが多い
  • 幼児期にひとり遊びが多い
  • 集団活動が苦手

言葉の発達が遅れたり、オウム返しが多かったりするのもASDのサイン・症状のひとつです。
幼児期には一人遊びが多く、集団活動を苦手とすることが多いため、保育園や幼稚園で気づかれることもあります。さらに、特定の物事に強い関心を持ち、長時間集中することがある一方、決まりごとの変化に対して強い抵抗を示すことがあります。

SLD、LDのサイン・症状

SLD(限局性学習症)、LD(学習障害)は、読み書き能力や計算力などにおいて支障が現れることが特徴です。
SLD、LDの主なサイン・症状として次のものがあります。

  • 文字を読むこと・書くことに関心がない
  • 文字を書きたがらない
  • 単語の発音を正確に言えないことがある
  • 歌の歌詞を覚えるのに苦労する(歌詞を理解できるかどうかは無関係)

例えば、「エレベーター」を「エベレーター」と発音するなど、言葉の正確な発音が難しい場合があります。
SLDには、読むことが困難な「読字障害」、書くことに困難を感じる「書字障害」、計算や数の概念の理解が難しい「算数障害」など、いくつかのタイプがあります。

トゥレット症候群のサイン・症状

トゥレット症候群の主なサインとして、本人の意思とは関係なく繰り返される「運動チック」と「音声チック」が挙げられます。
運動チックと音声チックのサイン・症状は次のとおりです。

運動チック

  • まばたきや顔をしかめる
  • 飛び跳ねる
  • 体を叩く
  • 首を激しく振る
  • 歩いているときにしゃがむ
  • 地面を強く踏みつける

など

音声チック

  • 咳払い
  • 舌打ち
  • 言葉の繰り返し
  • 不適切な言葉の発声

など

これらの症状が一時的に見られることは珍しくありませんが、運動チックと音声チックの症状が同時に現れ、
1年以上続く場合にトゥレット症候群と診断されます。

吃音のサイン・症状

吃音の主なサインとして、言葉の流れが途切れやすいことが挙げられます。
具体的な吃音のサイン・症状の例は次のとおりです。

  • 「ぼ、ぼ、ぼくが」など、
    初めの音やことばの一部を何回か繰り返す
  • 「ぼーーーくがね」など、初めの音をひきのばす
  • 言いたいことがあるのに、最初のことばが出づらい

これらの症状が一時的なものではなく、1年以上続く場合、吃音として診断されることがあります。話し方の特徴から、周囲にからかわれたり、ゆっくり話すよう指摘されたりすることがあり、その影響で話すことに対して消極的になることもあります。

大人が発達障害に
なることはある?

発達障害は、大人になってから新たに発症するものではありません。生まれつきの脳の特性によるものです。
しかし、幼少期には特性が個性として受け入れられたり、周囲のサポートによって気づかれにくかったりすることがあります。そのため、発達障害を持つ人が自身の特性を認識しないまま成長し、社会に出てから気づくケースもゼロではありません。
進学や就職により人間関係が複雑になったり、仕事等で計画性や柔軟な対応を求められる場面が増えることで、これまで問題にならなかった特性が表面化することがあります。これは努力不足や育て方の問題ではなく、特性によるものです。

大人の発達障害の特徴

大人の発達障害で、特に自閉スペクトラム障害が主に現れた人の特徴には以下があります。

  • 会話の中で、表向きの発言と本心の違いがわからない
  • 相手の言葉の意図を汲み取るのが難しい
  • その場の雰囲気に合わせるのが苦手
  • こだわりが強く、周囲や職場のペースに合わせるのが難しい

職場では建前と本音を区別したり、上下関係や外交などをうまく処理しなければなりません。学生時代と比べると対人関係が難しくなるため、大人になって円満な対人関係を維持するのが難しく感じる人もいます。学生時代は目立たなかった発達の問題が、実社会に出て顕在化する事が大人の発達障害の特徴です。
また、対人関係や仕事のストレスが続くことで、精神的に追い詰められ、不眠や不安障害、うつ病などを引き起こすこともあります。
近年は大人の発達障害について一般的に認知されつつあるため、「もしかしたら自分は発達障害かもしれない」と感じたら、一度医療機関を受診しましょう。

発達障害の
発達支援・治療

ここからは、発達障害の以下5種類の支援・治療について解説します。

  • ADHDの発達支援・治療
  • ASDの発達支援・治療
  • SLD、LDの発達支援・治療
  • トゥレット症候群の発達支援・治療
  • 吃音の発達支援・治療

ADHDの方へのサポート

ADHDのある人へのサポートでは、環境調整と行動の工夫が重要です。
特に幼児期・学童期には、課題に集中しやすい環境を整えることが効果的です。
例えば、余計な刺激を減らすためにテレビを消したり、課題を短時間で区切って休憩を取るタイミングを決めておいたり、やるべきことをToDoリストにまとめたりする方法が役立ちます。
また、ADHDの子どもができないことに対して、「ダメでしょ」など、否定的な言葉で感情的に反応しないよう注意が必要です。親や支援者は、感情的にならず、良い行動を強化するための褒め方を工夫する必要があります。
環境調整や行動の工夫を行っても、症状が日常生活に与える影響が大きい場合、薬物療法を併用しながら適切なサポートを行うこともあります。

ASDの方へのサポート

ASD(自閉スペクトラム症)のある人へのサポートでは、対人スキルの向上と環境調整が重要です。
個別指導や小規模な集団療育を通じて、コミュニケーションのスキルを高め、社会適応力を養うことを目指します。
また、視覚的な手がかりを用いたり、先の予定をわかりやすく示したりすることで、安心して過ごせる環境を作ることも有効です。

SLD、LDの方へのサポート

SLD(限局性学習症)、LD(学習障害)の人には、個々の困難に応じた学習方法の工夫が重要です。
例えば、読むのが苦手な場合は、指で文字をなぞりながら読む、文章を短く区切る、音声教材を活用するなどの方法が有効です。書くことが難しい場合は、大きめのマス目のノートを使う、タブレットやパソコンを利用することで負担を軽減できます。
計算が苦手な場合は、視覚的に数を理解できるように絵や図を用いることも有効です。

トゥレット症候群の方
へのサポート

トゥレット症候群のある人へのサポートでは、症状の理解と適切な対応が重要です。チックは短時間なら抑えられることもありますが、無理に抑えると強く現れることがあり、本人にとって大きな負担となります。
そのほか、目に見えるチックだけでなく、喉の違和感や体のむずがゆさなど、周囲からはわかりにくい症状もあるため周囲の理解が必要です。
また、チックを抑える代わりに別の動作を行う「ハビットリバーサル」や、症状の強さに応じた薬物療法が用いられることもあります。

吃音の方へのサポート

吃音自体の根治療法はないため、対症療法として症状を和らげたり、話しやすくする工夫を行ったりします。
主なアプローチとして、声を出して話す練習を行う「直接法」と、日常生活で吃音に悩まされず話すことを目指す「間接法」があります。
また、吃音が原因で学校や職場でストレスを感じないよう、環境を整えることも重要です。

発達障害の発達支援・治療のイメージ

発達障害の診断

発達障害は、医師による問診や行動観察、心理検査などを通じて診断されます。
診断基準としては、アメリカ精神医学会によって作成された「DSM-5-TR」や、WHO(世界保健機関)によって作成された「ICD-11」を用いるのが一般的です。
また、発達障害は脳機能にあることがわかっているものの、脳機能の障害を起こす要因は明らかになっていません。現在では、遺伝的な要因のほか、胎児のときの食事やストレスなど環境要因が指摘されています。

発達障害に
早く気づくポイント

発達障害の兆候を早期に見つけるためには、日常の行動や習慣に注目することが重要です。
次のような行動が見られないか確認しましょう。

  • ひとり遊びが多い
  • 同級生と遊ぶのが苦手
  • 一方的な会話になりやすい
  • 指示が伝わりにくい
  • 話を聞いていないように見える
  • 急な予定変更に混乱しやすい
  • 忘れ物が多い
  • 支度や片づけができない
  • 大きな音が苦手
  • 特定の服しか着られない
  • 偏食がある
  • 感情のコントロールが難しい

など

こうした特徴に気づいた場合、専門機関に相談することが早期支援につながります。