うつ病

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うつ病とは?
気分障害のひとつ

うつ病は、気分が落ち込んだり、何をしても楽しめないと感じたりする病気です。
憂うつな気分など精神的な症状のほか、食欲の低下や睡眠障害、慢性的な疲労感などの身体的な不調も現れます。うつ病の発症には、精神的・身体的ストレスによって脳の働きに異常が生じることが背景となっています。健康な人であれば、一時的な落ち込みがあっても時間の経過とともに回復しますが、うつ病の場合は自己治癒が難しく、症状が悪化することも少なくありません。
そのため、単なる気分の落ち込みとは異なり、うつ病の場合は早期の適切な対応が求められます。もし、うつ病の疑いがある場合は自己判断せず、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。
治療には休養をしっかり取ることが重要で、無理をせず適切な支援を受けることが回復への第一歩となります。

うつ病とは?のイメージ

うつ病の種類

うつ病にはいくつかの種類がありますが、代表的なものは次の3種類です。

  • メランコリー型うつ病
  • 季節型うつ病
  • 非定型うつ病(新型うつ病、現代型うつ病)

メランコリー型うつ病

メランコリー型うつ病は、一般的なうつ病の代表的なタイプとされます。
これまで楽しんでいたことに対して喜びを感じられなくなり、日常の活動にも意欲が湧かなくなるといった特徴があります。
特に朝になると気分の落ち込みが強く、早朝に目が覚めてしまう睡眠障害を起こすことも多いです。そのほか、食欲の低下や体重の減少が顕著で、周囲から見ても動作が遅くなり、表情が暗くなることも特徴です。
また、実際の出来事とは関係なく、強い罪悪感に苛まれることもあります。特に責任感が強く、真面目な人に多いとされます。

季節型うつ病

季節型うつ病は、特定の季節にうつ症状が現れ、季節の変化とともに回復する特徴を持つ精神疾患です。
主に、「冬季うつ病」と「夏季うつ病」の2種類に分類され、それぞれの特徴は次のとおりです。

冬季うつ病 夏季うつ病
発症時期 秋〜冬
春先になると回復する傾向あり
梅雨〜夏
初秋には回復する傾向あり
考えられる原因 日照時間の減少など 強い日差しや暑さによる
ストレスなど
症状 動作の緩慢化、引きこもり傾向、
過眠、過食など
不眠、食欲低下、倦怠感、
無気力など

冬季うつ病の原因は日照時間の減少と考えられており、高緯度地域の北欧の国々では、南国と比べて発症率が高いことがわかっています。 また、夏季うつ病は夏バテと似た症状を起こすことが特徴です。

非定型うつ病
(新型うつ病、現代型うつ病)

非定型うつ病は、従来のうつ病とは異なる特徴を持つタイプのうつ病です。「新型うつ病」「現代型うつ病」などと呼ばれることもあります。
20〜30代の女性に多く見られ、気分の浮き沈みが激しい点が特徴的です。ストレスを感じる状況では落ち込みますが、楽しいことがあると一時的に元気になる傾向があります。
また、従来のうつ病では不眠や食欲不振が多いのに対し、非定型うつ病では過眠や過食が見られます。体が重く感じ、動くのが困難になる症状も現れやすいです。そのほか、従来のうつ病は自分を責める傾向が強いのに対し、非定型タイプは他人や環境のせいにしやすいのが特徴です。

うつ病と躁うつ病
(双極性障害)の違い

うつ病と躁うつ病(双極性障害)は根本的に異なります。うつ病は「単極性うつ病」ともよばれ、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠などのうつ症状のみが続く病気です。
一方、双極性障害はうつ状態に加えて、気分が異常に高揚し活動的になる「躁状態」または比較的軽度の「軽躁状態」を繰り返す病気です。
双極性障害の患者さんは、はじめにうつ状態で受診することが多いため、うつ病と診断されがちですが、その後躁状態が現れることで双極性障害と判明することがあります。

うつ病の原因

うつ病の原因は解明されていませんが、さまざまな要因が発症の引き金となることがわかっています。
一般的には、以下の要因が関与すると考えられています。

  • 強いストレス(環境の変化や重圧、別れなどの喪失体験)
  • うつ病家系(遺伝的要因)
  • ホルモンバランスの変化(妊娠や産後など)
  • 特定の身体疾患(甲状腺機能の異常など)
  • 特定の薬や物質(ステロイド、アルコールなど)

例えば、身近な人との別れや病気、仕事のプレッシャーなどが大きな負担となり、うつ病を引き起こすことがあります。
一方で、昇進や結婚、子どもの独立など、一見喜ばしい出来事も、本人にとってはプレッシャーやストレスとなり発症につながることもゼロではありません。
また、遺伝的要因も関係していると考えられており、家族にうつ病の患者がいる場合、発症リスクが高まることが指摘されています。
このように、さまざまな要因が複雑に絡み合うことが原因でうつ病は発症するため、単純な要因だけでうつ病の原因を説明することはできません。

うつ病のサイン・症状
チェックリストで確認

うつ病のサイン・症状はさまざまです。
代表的な症状に気分の落ち込みや体のだるさなどがありますが、
うつ病のサインは「精神症状」と「身体症状」の大きく2種類に分けられます。

精神症状

以下のような精神的な症状が見られる場合、うつ病が疑われます。

気分の変化
  • 一日中気分が落ち込む
  • 何をしても楽しめない
  • イライラや不安感が強まる
  • 以前は関心があったことにも興味を示さなくなる
  • 些細なことでも悲しくなり、涙もろくなる
思考の変化
  • 物事を悲観的に捉えがちになる
  • 自分を責める気持ちが強くなる
  • 未来に希望が持てず、無価値感や絶望感に襲われる
  • どんな問題も解決できないと感じる
行動の変化
  • 口数が減り、人との会話を避けるようになる
  • 仕事や勉強に集中できず、ミスが増える
  • 外見や服装に無頓着になる
  • 落ち着きがなくなったり、逆に反応が遅くなる
その他
  • 些細なことに焦りや怒りを感じやすくなる
  • ひどくなると「生きる意味がない」と感じることがある

このような症状が続く場合は、早めに医療機関に相談しましょう。

身体症状

うつ病は精神的な症状だけでなく、身体にもさまざまな不調を引き起こします。以下のような身体症状が見られる場合、うつ病が疑われます。

睡眠に関する症状
  • 寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚める
  • 早朝に目が覚めてしまい、その後眠れない
  • 逆に過度に眠りすぎてしまう
全身の不調
  • 体がだるく、常に疲労を感じる
  • 何もしていなくても肩こりや腰痛がひどくなる
  • 背中や関節に痛みを感じる
消化器系の異常
  • 食欲がなくなる
  • ストレスから過食に走ることもある
  • 便秘や下痢を繰り返す
循環器系・神経系の症状
  • 動悸がする
  • めまいやふらつきが頻繁に起こる
  • 耳鳴りが続く
その他の身体的変化
  • 喉が乾きやすくなる
  • 性欲がなくなる
  • 生理不順やホルモンバランスの乱れ
  • 無表情な顔つきが多く見られる

これらの症状が続く場合は単なる体調不良と考えず、心の不調を疑うことも重要です。
早めに専門医に相談し、適切なケアを受けることが大切です。

うつ病の人がとる
行動とは

うつ病の人は日常生活や職場での行動に変化が現れます。うつ病の人に多く見られる行動には、以下があります。

  • 職場で遅刻や欠勤が増える
  • 仕事のミスが増える
  • 作業のスピードが落ちる
  • 仕事への意欲がなくなる
  • 家庭での会話が減る
  • テレビや新聞、趣味などに対して興味がなくなる
  • お風呂に入らない、服装を気に
    しないなど
    身だしなみに気を遣わなくなる
  • 人との接触を避ける
  • 飲み会やイベントなど社会活動への参加を拒む

このような行動が続く場合はうつ病の可能性があります。
ご家族や周囲の人が気づいたときは、本人を無理に変えさせようとせず、専門家への相談をすすめることが大切です。

うつ病の人がとる行動のイメージ

うつ病の治療・対処法

うつ病の治療・対処法には、大きく分けて次の4種類があります。

  • 休養
  • 薬物療法
  • 精神療法
  • その他の治療法

治療法①休養

うつ病の回復には、脳をしっかりと休ませることが重要です。
うつ病は、脳の働きが低下した状態であり、過度に負担をかけ続けると回復が遅れてしまいます。そのため、無理に頑張るのではなく、意識的に休養をとることが治療の基本です。
休養の取り方は、症状の程度によって異なります。うつ病の症状が軽度の場合は、仕事量を減らしたり残業を控えたりするだけで改善することもあります。ただし、症状が重い場合は状況に合わせ、仕事を休んでの療養が必要です。
自宅での療養が可能な人もいますが、「家族に迷惑をかけている」と感じて落ち着かない場合は、一時的に入院をするのも選択肢のひとつです。

治療法②薬物療法

うつ病は薬物療法で治療を行うことも多いです。
うつ病の治療には「抗うつ薬」が使用され、抗うつ薬は脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの働きを調整し、うつ病の症状を和らげる役割を果たします。
うつ病は、脳の情報伝達機能に異常が生じることで症状が現れると考えられており、薬物療法は脳の機能のバランスを整える重要な手段です。
また、抗うつ薬の効果は服用開始直後には現れず、通常2週間ほどかけて徐々に作用します。そのため、焦らずに治療を継続することが大切です。
効果を実感できないからといって自己判断で服用を中断したり、勝手に量を増減させたりすることは避けましょう。治療中は副作用が出ることもあるため、医師と相談しながら適切に治療を進めていく必要があります。
そのほか、うつ病の症状が軽度の場合は、漢方薬による治療を開始することもあります。

治療法③精神療法

精神療法は医師や臨床心理士との話し合いを通じて、行われます。
精神療法にはさまざまな種類があり、中でも代表的なのが「支持的精神療法」です。支持的精神療法とは、患者さん本人とカウンセラーが話し合い、心の悩みの解消を一緒に目指す治療法です。患者さん本人が持っている資質を十分に活かせるようにすることで、適応力を上げることを目指します。そのほかに「認知行動療法」と「対人関係療法」という精神療法もあります。
認知行動療法では、否定的な思考パターンや絶望感から抜け出し、より前向きな考え方を身につけることを目指します。
一方、対人関係療法は、過去や現在の社会的役割に焦点を当て、対人トラブルや生活の変化に適応できるようサポートします。
精神療法は単なる治療だけでなく、うつ病の再発予防の面でも有効です。
また、軽度のうつ病であれば薬物療法を使わず、精神療法で改善が期待できることもあります。重度のうつ病でも薬物療法と精神療法を組み合わせることで、より効果的な回復が望めます。

治療法④その他の治療法

うつ病の治療には、薬物療法や精神療法のほかに、「高照度光療法」や「電気けいれん療法」「経頭蓋磁気刺激法(TMS)」などの専門的な治療法が用いられることがあります。これらの治療法は、うつ病の種類や症状の重さ、個人の状態に応じて適応が異なるため、専門医と相談しながら適切な方法を検討することが大切です。
また、「経頭蓋磁気刺激法(TMS)」などの治療は保険適応外で行っている医療機関もみられ、適正な料金設定なのか検討することも大切です。

うつ病の診断

うつ病の診断は、患者の症状を詳細に評価し、他の精神疾患や身体的な病気と区別することが重要です。
医師は患者の気分の変化が一時的なものか、それとも日常生活に支障をきたすほど深刻なものかを判断し、診断基準に基づいて評価を行うのが基本です。
現在、うつ病の診断にはアメリカ精神医学会による「DSM-5」や、世界保健機関(WHO)による「ICD-10」が用いられています。
例えば、DSM-5では、抑うつ気分や興味・喜びの喪失を含む9つの症状のうち、5つ以上が2週間以上続く場合に「うつ病」と診断されます。